前回の記事はカラスノエンドウでしたが…
今回は野草の中でも最もよく知られる”クローバー”のエッセイです。
春の風景、楽しんでください!(豆知識はこちらから)
【エッセイ】昔美しく、いま美味しく
4月がやってくる。風がほんのりあたたかく、やわらかく、日差しもぽかぽかして気持ちのいい季節だ。
気温が上がり、南風に乗って今年もツバメがやってきた。聞こえてきた懐かしい声。
ふと仰ぎ見ると、二羽のツバメがなにか小競り合いをしているかのように飛び回りながらつつき合っている。他にも渡り鳥はいるはずなのだがツバメだけには、長旅ご苦労さま、よく来たねと思う。
辺りに漂う空気も甘い。沈丁花の香り、田んぼの準備で耕された土の香り、何かわからない甘く優しい春の花の香り。虫も蝶も大喜びで風の間を舞う。
道端の野草の様子も随分と変わって来た。まず草も花も色彩が増えた。ナズナが丈を伸ばし、カラスノエンドウは成長盛んに茂り、早くも紫の花を咲かせている。
花は、瑠璃唐草やタンポポ、スイセンが目立つように花開き、ムスカリ、ヒメオドリコソウも草たちの間から顔を出す。
クローバーも地面が見えないほど盛り上がるように生い茂ってきた。明け方にかけて雨だったので、その水分をたっぷり吸い上げて、午後からの晴れ間に精一杯葉を広げている。今日はクローバーを摘んでいこうと思った。クローバーも実は食べられる野草だということを最近初めて知った。
よく見るとてんとう虫がいた。本当にクローバーにとまるんだなぁと、あまりの平和な光景にシャッターを切った。水をはじく濃い緑の葉っぱに、艶やかな赤い背中がよく映える。
指で葉の少し下をつまんで摘ませていただく。なるべく柔らかそうな葉っぱを選びながら。調べたところによると、斑入りの葉もそうでない葉も同じように食べられるのだ。葉っぱが直径3センチくらいの大きなものも頂いた。
洗って生で食べてみると、苦みやえぐみはないにしてもやっぱり草という感じがする。そのままでは少し食べづらい。そこで天ぷらにしてみることに。
洗って水気を拭き、三枚の葉と茎の接合部分を少し指でつまんで抑え、平らにして揚げやすくしてみた。そのままでもいいが、茎の方向が葉とは違うので、向きを揃えたら両面揚げやすくなるはずという算段だ。葉っぱは衣を弾きがちなので、しっかりくぐらせる。
葉っぱ同士なるべく付かないよう菜箸でそっと置く。意外と神経を使う作業だ。置いたあと衣がはがれてしまうので易々といじれない。薄い葉なのですぐに揚がるし気づかないうちにこんがり揚げ過ぎになる。油を切って、さて、一口つまんでみた。
スナックのようにサクサクだ。特段何かの味がするというわけではないが、とても優しい味である。青臭さ、食べにくさは全くなくて美味しい。これは日々の暮らしの料理にまた一つレパートリーが増えたのではないか?としたり顔。
なんせクローバーは縁起のいい野草だと思う。四つ葉のクローバーを見つけるだけで、いい日が確定する。夢中で探す楽しみもある。
クローバーは別名シロツメクサである。なぜか和名で呼ぶ方と昔懐しい感じがする。
昔は、あの白い花を茎を長いままにして何本も摘み、束ね、花冠を作って遊んでもらったのを思い出した。
茎の長いのを探すのに苦労した気がする。また出来上がって頭に合わせると結構ゴツく感じたので、優雅なお姫様気分とは少し違ったような記憶もある。でも、とても手間と時間と沢山の花の命が懸かった重いものだということは心の隅のどこかで感じていた。
誰から教わったのかもはっきり覚えていないが、草遊びは子供同士で継承されていたのだと思う。少し年齢は違っても無垢な縦のつながりがあった。いまその思い出に感謝している。
大人になった今は悲しいかな、作り方を忘れてしまったどころか、色気より食い気に走っている。
シロツメクサを実際に摘んで手の中に順に収めていったら、私の両手は記憶を思い出すのだろうか。
また花が咲いたころに実証してみても面白そうだ。
花冠を楽しんだら、丸ごと衣に付けて揚げる図が一瞬過ったのは、幼い頃の自分には内緒である。
(エッセイ おわり)
【レシピ】クローバーの天ぷら
※野草を食べる前に野草の探し方で気を付けること』の記事をご一読頂きご参照下さい。最終的には各々自己判断でお取り扱い頂きます様ご了承下さい。(豆知識はこちらから)
【きょうの材料】
●クローバー(柔らかい葉っぱの、先っぽ部分5cm前後)…15本位
●小麦粉…約大さじ3
●水…同上
●酢…小さじ1強
①クローバーをよく洗い、水気をよく拭き取る。
※葉と茎の境を軽く指で抑え平らにすると形が少し整う。抑えすぎると葉っぱがとれる。
②ボウルに小麦粉と水と酢を混ぜて衣を作る。揚げ油を温め、ペーパーや新聞紙も用意。
③よく衣につけて菜箸で丁寧に一枚ずつ落とし、低温で揚げる。
※好みで塩や天つゆなどと。熱いうちがサクサクして美味しい。冷えると少し固くなる。
~ いつも ありがとうございます それではまた ~