私には、”小さなことからより自然に親しむ暮らしがしたい”という思いがあります。最近は、散歩道に生えている野草について知りたくなり、食べられる草を調べたりして感じたことをエッセイにしました。
”食べられる野草”という視点で外に出ると、楽しく覚えていけそうな気がします。味わってみた時の簡単なレシピも載せていますので、よろしければお読みください。(豆知識はこちらから)
【エッセイ】野草食す春
節分を過ぎて一週間もたたないうちにもう梅が花開した。暖かい陽気が続き春の兆しを感じさせるこの頃だ。暖かい昼間の日差しと、未だ冷たい風。空気中にも花の香りが混じるためか、ほんのり甘い香りがする。
散歩しながら道端の野草に目をやる。瑠璃唐草が青く光を集め、反射し空を優しく見上げている。
羽化したばかりなのか、背後から威勢よく飛んできた蝶がくるりと周囲を舞う。すぐ同じ蝶と出会って楽しそうに高く舞い上がってどこかへ飛んで行った。
冬の間もずっと咲いていたホトケノザは紫の花びらを沢山付けてる。秋に枯れた草は陽に当たって白く光り、ブロンド色に輝く美しい姿で立っている。
そういった草に隠れて見えない時もあるが、下からにょきにょきと直立してくるお馴染みの草がある。カラスノエンドウだ。
このカラスノエンドウが最近食べられる事を知って、何回か少量ずつ摘んでは頂くようになったのだが、野草の青臭さが全くなくてこれがかなり美味しいのである。微妙な甘味と旨味があり、どこか優しさも感じられて、しかも柔らかくて食べやすい。リピートするのに時間はかからなかった。
これまでの私にとって、野草は春に楽しむ”旬のもの”だった。
私は田舎育ちなので、春に採れる野草で代表的なヨモギやアズキナ、フキノトウやフキ、ワラビやタラノメ等、野草や山菜には親しんできたし、食べることも大好きである。一番好きなのは春のヨモギだ。
なので、旬の一時だけハンターのセンサーが働くのだが、一通り味わって時期が終わるとまた道草の植物としての認識に戻るのだ。つまり野草を食べることは楽しいが、年がら年中日常的に食卓に取り入れていたわけではなかった。
でもカラスノエンドウを食べてから、もっと早く食べられると知りたかったと思うほど気に入ってしまった。どこにでも生えているからずっと存在は知っていたし、何ならカラスの好物かと思っていたがこれは私の好物になった。ちなみに牛も好んでたべるらしい。
花が咲くのは3~6月で、美しい紫色。しかしそれ以外でも摘める時期は長い。草刈りが好きな方には申し訳ないが、刈ったり取り除いてしまっては勿体ないほど大変美味しい。(何回言うのだ)
今日もさっそく摘んでいく。
どことなく威勢がよくて鮮やかな緑色の葉をしている場所を選び、3~7cm程の所で折る。今日は20本ほどいただいた。手塩皿に一品できるくらいの量である。
家に戻ってさっそく調理。握った手から爽やかな草の香りがする。
まずは水洗い。黒いアブラムシがひっついている事がある。少しぞっとしながらも、水に流していく。
小鍋に水を張り沸騰させたところに投入する。ふわっと爽やかで甘くて優しいにおいがする。
水にさらしたあとの水切りもぎゅっとはせず、箸に任せて水分を落とす。しっとりとした食感で頂きたい。調味料は擦った胡麻に醤油を少し。あとはすべてを和えるだけ。
カラスノエンドウの持つ甘味が感じられるこの食べ方が、私の最近のお気に入りになった。小さいお皿に少量だけというのは上品に見えるしなんだかオツである。でも最も感じるのは、何物にも代えがたい自然の豊かな雰囲気がその一皿から惜しみなく溢れている、そんな気がしてくるのだ。ほんの少量でもだ。
3月4月とどんどん気温が上がれば、きっと毎日摘んでも追いつかないくらいの生命力あふれる姿が見られるだろう。食いしん坊の私は、春に咲く紫の花を待たず次はどうやって美味しく食べようかを虎視眈々と考えるのである。
(エッセイ おわり)
【レシピ】カラスノエンドウのごま和え
※野草を食べる前に野草の探し方で気を付けること』の記事をご一読頂きご参照下さい。最終的には各々自己判断でお取り扱い頂きます様ご了承下さい。(カラスノエンドウの豆知識はこちらから)
【きょうの材料】
●道端のカラスノエンドウ(柔らかい先っぽ部分5~7cm前後)…20本位
●ごま…小さじ1
●しょうゆ…小さじ1/4位(好みの量)
●塩…少々(下茹で用)
①水を張ったボウルでカラスノエンドウをよく洗う。手で軽く揉むとアブラムシがとれる。(4、5回水を変えながら)
②小鍋に水を入れて沸騰させ、塩を一つまみ入れる。①を入れて混ぜつつ30~40秒茹でる。(茹で加減は茎の硬さにより様子を見ながら調整)
③冷水にとり、箸でだいたい方向を揃えながらまな板に載せ、1~2cm幅に切る。
④すり鉢にごまを入れてすりこ木で擦り、しょうゆと③を加え箸でよく和える。小さいお皿に盛る。
~ いつも ありがとうございます それではまた ~