前回の記事はオニノゲシでした。
今回は、みなさん一度は目にしたことがある”オオイヌノフグリ”を見つけたエッセイです。(オオイヌノフグリの豆知識はこちら)
まだ2月ですが、足元を見れば華やかなブルーのお花たちがもう咲いています。
【エッセイ:旬なひとさら】
地上が賑やかになってきた。
ツグミがぴょんぴょん跳ね、ムクドリが群れをなし、スズメはつがいを見かけるようになり、ケリの幼鳥はまだおぼこく、けたたましく鳴きもせず飄々としている。
クモが地上を這い、テントウムシがどこからともなくあちらこちらに現れ、葉を茂らせていたオオイヌノフグリがいよいよ咲き、小さな蜂が飛んでいる姿をみせるようになった。
オオイヌノフグリが咲くと、一気に地面が明るくなるなぁと感じる。
淡い水色の花びらひとつひとつはとても小さく1cmあるかどうかぐらいだが、私にとっては春の到来を象徴する野草の一つである。
とはいえまだ2月。晴れていても、まだ気温が上がりにくい午前中は花が開いていないことも多く、夕方には花を閉じてしまう。
ちらほら咲き始めたのを知って一週間くらい経ったころ、
もうそろそろ摘ませてもらおうと正午過ぎに散歩に出た。一度、よく晴れた午前10時くらいに出掛けてもまだ花が閉じていたことがあったから。
ホトケノザやオニノゲシが咲いているスポットの間で、
思ったとおりオオイヌノフグリも一斉に咲いて顔をこちらに向けていた。
もうすでに咲き終わり、はらりと落ちたばかりの花びらもあった。
しおれて花がおちるわけでもなく、まだ元気よく咲いていた時の淡い水色をそのままに残しながらはらりと落ちるので、そのまま拾って持ち帰る。
それにしても風がまだ冷たくて指先が震える。遠くの山の上に雪が残り、集めたお花の袋も飛んでいきそうだ。
オニノゲシとカラスノエンドウの葉先と、ホトケノザも少し摘ませてもらう。
オオイヌノフグリの葉っぱは、かじるとちょっと苦い。でも食べられるみたいだし、調べるといろんな方がその花の色を楽しんでいた。
私はどうしてみようか。
早春の時期に空に向かって花びらを広げている野草たちで、ちらし寿司にしてみよう。
まずはお米の浸水から。お寿司は炊きあがり後の作業が忙しいから、それまでにあわせ酢や具材を準備する。
たまたま、ぬか漬けの水分をとるために干し椎茸をぬか床に入れていたので、
それを取り出して軽く洗い、細切りにする。人参も薄切りにして、出汁と砂糖と醤油で煮て、気持ち濃いめに下味をつける。
次は錦糸卵作り。とにかくよく溶いて、よく温めたフライパンで焼く。一陣より第二陣のほうが、一端熱が下がって安定するからか、思いのほかきめ細かく綺麗に仕上がった。
ホトケノザは紫の花を慎重に抜いておく。残った茎と葉は、オニノゲシの葉と一緒に茹で、刻んでおく。緑の色が白いお米に映えるとやっぱり春らしくていいなと思う。青物だったら、なんでもいい。
炊きたてのご飯に、すし酢と具をまぜていく。
お腹が空いてしかたがないので、まぜながら味見と称して大きな一口を食べる。かなりおいしくできた。
混ぜるか食べるかどっちかにすればいいが、これからお楽しみの飾る作業をするにお腹がすいてイライラしていてはできないから、やっぱり二口、三口と食べ進める。全部食べ切らない程度に。
三分の二はちゃんと飾る用にとりながら。
平皿に酢飯を乗せて、カラスノエンドウのちいさなつるの曲線に見惚れながらご飯の縁に添える。
錦糸卵をふんわり乗せたあと、ホトケノザの鮮やかな紫が卵の黄色に映える。これだけでも十分美しい。
そしてオオイヌノフグリを、すきなところにすきなだけ配置する。
思わず写真を何枚もとってしまうほど、色とりどりなちらし寿司ができた。美しさは野草自身のものだが、その色をたのしみながら飾るのはまた格別の、静かな感動を覚える。
さっき摘みに行った場所をすこしだけ再現しているような。
実際、母に教わったすし酢の配分と、両親からわけてもらったお米、鶏さんからの卵、干し椎茸、農家さんからの人参、大企業からの調味料、地球からもらったガスや鍋の金属とそれを加工してくれた人々の技術、そして大地からは摘みたての野草たち。
全部に共通する主義はなくても。いまできる範囲で集めてできた一皿。
私にとってはすごいごちそうだった。
美しさがうれしくて美味しくて、箸がとまらずに、一合分はあっという間だった。

(エッセイ おわり)
【レシピ:早春ちらし寿司】
※野草を食べる前に野草の探し方で気を付けること』の記事をご一読頂きご参照ください。最終的には各々自己判断でお取り扱い頂きますよう、ご了承ください。(オオイヌノフグリの豆知識はこちら)
【きょうの材料】 ※ 一人前
●オオイヌノフグリの花‥15~20枚(飾り用)
●ホトケノザ…花付きの約7cmの長さのものを4、5本(花びらは飾り用)
●オニノゲシの若葉…長さ約8cmx5枚ほど
●カラスノエンドウ…4cmくらいx5枚ほど(飾り用)
●お米…一合
●卵…1個(薄く焼いて細く切り、錦糸卵に)●サラダ油…適宜
●干し椎茸小3個、人参小1/3本‥椎茸は戻して人参も切り、出汁、砂糖、醤油で数分煮含める。(今回はぬか床に水分除去のために入れていた干し椎茸を千切りに)
●すし酢…酢大さじ3、砂糖大さじ2.5、塩小さじ1弱を、混ぜてしばらく置く。(急ぐなら温めて混ぜる)
①お米は洗って約40分浸水し、少し少なめの水でやや硬めに炊く。
②炊きあがりに酢飯をつくれるように、すし酢の材料を混ぜておく。
③好きな具を用意する。今回は戻した干し椎茸と人参を薄切りにして少し甘辛く煮ておき、よくといた卵1個で錦糸卵を用意しておく。
④ホトケノザは花を抜いてとっておき、葉と茎はオニノゲシと一緒に水洗いして1分ほど茹で、粗みじん切りにして水気を絞る。
⑤炊いて蒸したご飯に、少しずつすし酢を加え、好みの味に仕上げる。(すし酢は全量じゃなくてもOK)
⑥⑤と具の椎茸と人参もまぜ、器に盛り、錦糸卵、ホトケノザの花、オオイヌノフグリの花をちらし、カラスノエンドウを好みで添えてできあがり。
