時限的な私

校則のないがっこう

前回の本の続きです。(前回の記事はこちらから)

○著 者:西郷 孝彦
○題 名:『校則なくした中学校 たったひとつの校長ルール』
○出版社:小学館
○発売日:2019.11.16

世田谷区立桜丘中学校の西郷校長が、どのような経緯で校長になったか、

第三章で触れています。

意外にも、もともと人付き合いが苦手で、

夏休みに自由な時間がほしかったため教員を目指したのだとか。

始めて配属されたのは、特別支援学校でした。

必死にコミュニケーションをとろうとする養護学校の子どもに感化され、

相手がわからなくても、伝えようとする気持ちを大切にしてみたら、

気が楽になったそうです。

教員らしさより「素」の自分をさらけ出すことに充足感を実感していきました。

時限的な接し方

西郷さんは、ご自身の子育ての考え方についても書いています。

親よりも長く生きて行く子どもに対して、

こんなふうに持論を展開していらっしゃいました。

時限的な子離れ・親離れが必要だと考えました。すると逆転の発想で、「15歳までに何をこの子にしてあげられるか」と考えるようになりました。実際、高校生になると親の言うことなど聞きませんから、何か伝えるとしたら、中学生までなのです。接し方もかわります。だって「15歳で別れなければいけない」からです。そう考えると、「教えてあげたいこと」よりも、豊かに育って欲しいという願いが優先されます。


出典:西郷 孝彦.『校則なくした中学校 たったひとつの校長ルール』.第三章 子育ては15歳まで―親と子の関係.小学館、2019、P.140、141.

とても冷静に、ご自身と子供の関係性を捉えていらっしゃるなと、私は思いました。

特に「時限的」という言葉と感覚には、気づかされるものがあります。

子供が育ち、またその子供が大きくなって

やがて新しい家族をつくります。

そういった人間の営みは、世代を越えていつまでも続く予感がして

子供を迎える、子育てをするのは希望に満ちた人間の営みです。

一環として喜ばしい出来事だと思うのですが、

その前に一人一人の人生があり、

始まって終わるのがいつなのか、絶対に誰にも分からないという事実があります。

家族と呼べる人に出会って、子どもを授かれば、

子孫繁栄を願い、その出来事から得られる満足感はひとしおなのかもしれません。

そこで同時に、

家族という単位の温かい雰囲気だけでなく、

しっかりと重力を持った、

人と人の関係がそこにあるのだということを心に留めておくのも

心地よいことなのかもと、私は思いました。

「時限的」という西郷さんの表現は、

シビアでちょっとドキッとしますし、

非常に現実的な印象を感じます。

ただ自分の子供だからかわいい、なんでもしてあげたい。それに加えて、

もっと遠くを見ながら、

現在の在り方を問うていらっしゃるのではと思いました。

子供に教えてあげたいより、豊かに育ってほしいという考えが先に来るのは、

一見逆のようにも思えます。

豊かに育ってほしいから、なんでも教えてあげたい、という考えもあるからです。

しかし西郷さんはそれは逆だと考えられたんですね。

子離れという言葉にも、西郷さんの強い意思が感じられます。

いつまでも親子という関係性は変わりませんが、

お互いに意思があり、お互いの自立心を見つめているからこそ

時限的な接し方を意識されているんだと私は思います。

また、時限的に捉えるのは、自分にも言えるのではないでしょうか。

頭では、いつかはこの地球をさるときが来ることをわかっていても、

日々の生活では、

灯った火の元からろうそくが絶えず溶けていっている感覚をつかむのは

なかなか難しかったりします。

忙しさに流されてみたり、

疲れ切ったあと、エネルギーを補給するのに必死だったり、

体験にも終わりがくることを落ち着いて意識する余裕すらないような、

目まぐるしい日々を送っていたりします。

私もかつてはその経験があるのでよくわかります。

しかし、

気づいた時にはもう人生終わり?とあわてる前に、

私も時限的であることを、一日の一瞬でも思い出そうと、

西郷さんのこの言葉で刺激をうけました。

自分自身への接し方が変われば、

日常が、またカラフルになる、そんな気がすると私は感じました。

どのみち関係なく溶け続けているろうそくのろうに

この瞬間はどんな意図をのせて、ゆったり溶かそうか

そんなことを考えた私です。

今回で、こちらの本のご紹介は終わりです。

今日もここまでお読みいただき、ありがとうございました。

さて、いままで本のご紹介を主にしてまいりましたが、

一端お休みさせて頂きます。

次回以降は、

日々感じたことをエッセイとして書いていこうと思っています。

本の感想から、エッセイへと、表現は変わりますが、

ブログのテーマとして、伝えたいことの本質としては同じと私は考えております。

もし、お読みいただき、日々の生活で何かのヒントになったり、気分転換になったりしたなら、

嬉しく思います。

どうぞよろしくお願い致します。

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