水と土と、子供と大人

里山のあそび

大きな鷺たちが田んぼの傍でみられる春の季節となりました。

ツバメもやってきて、

巣作りの場所を探す様子はほほえましいです。

初夏の様に気温が上がったかと思えば、夜はまだ冷えますね。

さて今回は、新しい本について書いて行こうと思います。(前回の本の記事はこちらから)

○著 者:岡本 央
○題 名:『泥んこ、危険も生きる力に ないないづくしの里山学校』
○出版社:一般社団法人 家の光協会
○発売日:2019.8.20

著者の写真家の岡本央(おかもとさなか)さんは、

自然が沢山ある場所で育った子供たちの表情に魅せられて

多くの写真を撮影してきました。

本の舞台は千葉県のとある里山学校。

園児が通う「里山保育」と、

小学生が一日里山で過ごす「土曜学校」のある、木更津社会館保育園です。

敷地には古民家や雑木林、田んぼに畑などがあります。

お菓子も、ゲームも、お店も、時間割も、ないないづくしの学校です。

そんな環境だからこそ、子供たちの輝いた姿がありました。

掲載されている沢山の写真から、

自然の生命力や、開放感あふれる元気な子供たちの姿が伝わってきます。

保育園の宮﨑栄樹園長や講師の直井洋司さんの言葉も添えられていて、

子供たちがどのように見守られ、自分に夢中になれる場になっているのか、

わかりやすい言葉で綴られています。

表紙は何度も見てしまうほど素晴らしくて、

表情もよくわからないほど頭から泥をかぶった少年がいます(笑)

日本にはこのような保育園もあるのだと、私も学ぶことができました。

ご興味がある方は、ぜひ読んでみて下さい。

水と土こそ

さっそく読み進めていくと、こちらも思わず笑みがこぼれるような写真が現れます。

太陽の光がいっぱい注ぎ込んでいる田んぼで、

子供も大人も、みんな楽しそうに全身泥んこになって、

泥水をバシャバシャさせているんです。

子供たちは上半身裸で、笑いながらみんな大はしゃぎ。

そこにこんな言葉がありました。

水と土こそが
子どもたちの最善の
おもちゃにもかかわらず、
世間では
汚してもいい姿ではなく、
汚してはいけない姿で
遊ばせている。

出典:岡本 央.『泥んこ、危険も生きる力に ないないづくしの里山学校』.水と土と遊ぶ.家の光協会、2019、P.18.

私はどきっとしました。

この写真に添えられていたからこそ、響くものがありました。

本当に皆さんに見て頂きたい写真です。

子供もさることながら、大人もいい表情をしているのがとても印象的です。

確かに、こちらの言葉にあるように、

汚れることにネガティブな認識が世間一般にはあるように思います。

服を洗う立場になると、

汚す=洗うのが大変、と思ってしまいますよね。

しかし、こちらの里山学校ではそんな一般の概念を取り入れず、

自由に泥んこになって、大人も一緒になって、

かけがえのない時間を共有しています。

そこに映っている姿を、私が感じるには、

何も心配も、制限もなく、

ただ面白さ、開放感、気持ちよさ、安心感、大地の感触、

それらを全身で楽しんでいるようにみえます。

全身は泥の色ですが、人間の喜びを最高に表していると感じるからです。

泥だらけになって笑顔になれるのは、

子供に限らず大人も同じなんだと再認識できました。

たとえ、子供のころは抑圧して生きてきていたとしても、

大人になってからでも、

いつでも、土や自然に触れて、

あふれんばかりの地球の愛に触れて、

はしゃいでいいんですよね。

そういえば、土に触れることは大人になってからほぼ皆無でした。

個人的に昔を振り返ると、

田舎で育ったので、子供の頃は今よりも普段から土に触れていました。

五月の田植えシーズンには、田植え作業を手伝った記憶もあります。

田植え機で基本的に植えますが、

田んぼの機械が入らない場所や、

土の深さと機械の関係でしっかり植わっていない所もちらほら出てくるんです。

そういった箇所は、

後からそこまで歩いて行って、人が手植えします。

なので私も長靴で田んぼに入っていったり、

裸足で入って行った記憶があります。

田んぼの泥の感触は、なんとも言えません。

覚えているのは、

ぬるぬるとした土がきもちわるくて、でも精細さはわるくはなくて、

お日様に照らされた水面はなまぬるくて、下の方は冷たく、

一旦底まで入ると次の一歩のための足を抜くのが大変で、歩くのも一苦労。

両脚にものすごい負荷がかかって、筋トレそのものでした。

手をついたり、長靴が埋まったり、

長靴だけ残して足は次の一歩を踏もうと泥に突っ込んだり…

そんな身動きがとりにくい動作も、思うようにいかない滑稽な体勢も、

泥の上では笑いに変わってしまうから不思議です。

気を付けていても転ぶときは転びます。

周りから気を付けてと言われても、どんなに自分で注意を払っていても、

前フリにこたえるかのように、泥に足がとられて泥に引っ張られます。

泥に負けて思うようにいかないと、なぜか笑いが込み上げるんです。

泥って、面白いですね。万国共通のお笑い要素を感じます(笑)

それはきっと、

田んぼが安全ところで、

お米を生み出すところで、

生命を生み出す地球の土であることを

体でわかっているからなのかもと思います。

水に触れ、土に触れること、

そうすることに躊躇しなくていいことを、

子供でも大人でも、自分に与えてあげたいなと思いました。

今日もここまで読んで頂き、ありがとうございました。

次回に続きます。

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