本のご紹介の続きです。(前回の記事はこちら)
○著 者:長倉洋海
○題 名:『鳥のように、川のように 森の哲人アユトンとの旅』
○出版社:徳間書店
○発売日:1998.10
旅は続き、ヤノマミ族という種族を訪ねるためにデミニ村を訪ねます。
森の中にぽっかり円状に開けた場所を縁取るように屋根があり、約100人が住んでいます。
久しぶりの再訪に、大人も子供も嬉しそうに歓迎します。
色々な得意x色々な個性
長倉さんは村の社会についてこのように書いています。
狩りの得意な人、魚取りの好きな人、カゴを作るのが上手な人、精霊と交信することができる人、それぞれの得意な分野があって共同体が成り立っている。そして誰もが個性的だ。
出典:長倉洋海.『鳥のように、川のように 森の哲人アユトンとの旅』.第三章ヤノマミの地へ.徳間書店、1998、P.127.
ヤノマミ族の中では命令や強制がなく、やりたい人が好きなことをするという
シンプルな基準で村の生活が回っているようです。
素晴らしいですね。
得意な分野を持っているのは、文明社会といわれる生活でも森の中でも同じで、
生きる上で心からの充足感とつながっているのだと改めて気づかされます。
村人が100人いて、物凄く狩りの好きな人が50人で、カゴを作る才能がある人が50人だったら、
それでも村の生活は続きそうですが、
人それぞれに得意なことが違うから面白い化学反応が起きたり、生活が彩られますよね。
得手不得手も違ってさらに人の個性も違い、それが豊かさを生んでうまく回る。
誰の計らいでもないのに自然のサイクルと同じように人間も不思議だなと思います。
たとえ得意な事が同じでも、
彼らには同じ森の豊かさを享受しているという認識があるので
現代社会のような比較や競争などにはならないのだと思います。
個性を認め合う中で生まれ育てば、ゆるがない自信を体得していけると思います。
本で紹介されている長倉さんのフォトをみれば、みんなインディオは
年齢関係なく表情が豊かで目が輝き、生き生きとしています。ぜひ見て頂きたいほどです。
百聞は一見にしかずとはこの表現のためにあると私は思いました。
村の社会についてリーダーのダビさんは
長倉さんにこんな風にも話していました。
夜明け前に狩りに出る人もいれば、そうしない人もいて、それでもそれぞれを認め合い、
よく働く人が他の人の面倒をみたりするそうです。
実におおらかだなと私は思いました。
狩りに出る人も、そうしない人も、それを見ている人も、
みんなおおらかです。もっと言えば、
みんながおおらかだから成り立つのだと思います。
例えばもし一人でも、監視が好きな人がいたなら村の雰囲気は全く違うものかもしれません。
私がもし、この村に暮らすことになったらどうだろうと考えます。
いくら、森で採れる恵みはみんなと共有するとはいっても、
自分の得意な事だけ、やりたい事だけしていればいいとはいっても、
もし今の自分が今すぐここで生活をするとなったら、
少なからず気を遣ってしまいそうです。
物凄く器用に働いている人に目がいき、のんびりしていていい時さえ
どうも落ち着かないなって思うかもしれません。
個性を出し合い、好きな事をして生活ができる暮らしは素敵だと心の底から私は思います。
そして実際にそれを具体的にするには、ですが
ここでもきっと、ためらいなく受け取ることが大切になってくる気がします。
先ほどの話の狩りをしない人は、狩りをした人の獲物を申し訳なく食べはしないと思います。
先日のこちらの記事でも書きましたが、受け取ることは本当に大切だと感じます。
もちろん自分の力を使う事で他者を喜ばせたい人もいるかもしれませんし、
そういう人は見返りを求めないので、甘えているのもいいかもですが。
最初のうちはそれでいいですが、
受け取ることにどこかわるいなという気持ちがほんの少しでもある限り、
どんなに皆が個性を発揮している楽しい村に引っ越したとしても、
どこかで無理が出てくると思うのです。
他人の態度云々ではなく、自分の中にです。
あの人がこれだけしてくれたから返さなきゃとその対価を計算したり、
自分の得意なことはあの人の得意なことに比べたら生活に必須じゃないしと
どこかで卑下したとしたら・・・
それでは、せっかく大自然とおおらかな人々の中にいても
自分の心が満たされるかは謎ですよね。
罪悪感や気後れなく受け取ることは本当に大事だとここでも私は思います。
また、ヤノマミ族の中でも
意見の違う人が出てくれば、
自ら家を出て新しい家を他でつくるそうです。
インディオでも、考え方の違いや合う合わないはあると知って、
私たちと同じで親近感が持てました。(笑)
インディオも仙人のような特別な超人ではないんですよね。
相性が合わないものはしょうがないです。
無理に近くにいることはなく、自分が動いて、距離を置く。
とても潔くて平和的な解決法だと私は思いました。
そのことを、悪いことだとか気にしないのも清々しいです。
個性を活かしあう暮らしというと、
大きなことに感じるかもしれませんが、
まずは一人で自分の時間を使ってできる事があるのではと再確認します。
感謝して受け取る練習も、
具体的な行動の一つだと私は思っています。
今日も、ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
次回に続きます。